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by xMUGIx
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ロマノフ朝

■1915年 後半


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ラスプーチンの信者 歌手 アレクサンドラ・ベリング

ラスプーチンに初めて会ったのは、1915年11月だった。
ピストリコルスの妻サナは大変美しい女性で、
まるで陶器のような顔立ちをしていた。
甘やかされたわがままな子供のような魅惑的な印象を人に与えた。


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好奇心からラスプーチンに会ってみた人物 作家 ヴェーラ・ジュコフスカヤ

1915年末のラスプーチンのサロンの様子は、
サモワールが沸き立っているそばには、
灰色の看護服を着たアキリーナがぐったりとしていた。
彼女の横にはマリアがいて、
私をソファの隅に押し付けているラスプーチンを柔和な崇拝の表情で見つめていた。
シェホフスカヤ公爵夫人がやってきた。彼女も看護婦の服を着ていた。
「あんまり疲れたものだから一眠りしたいと考えていたのだけど、
こうしてあなたの所に来てしまったわ」
「まあ、いい子にするんだ」とラスプーチンは言った。
「大した御馳走だ」と言って彼は彼女の襟元から手を突っ込んで、胸を撫でた。
そして彼女の膝を抱きしめ、目を細めながら付け加えた。
「精神はどこにあるか知ってるかね?ここにあるんだ」
そう言ってラスプーチンは彼女の服の裾をまくった。
「ああ、扱いにくい連中だ。いいか、言うことを聞くんだ。このカマトトめ」
「私はすぐにお家に帰りますわ」と
公爵夫人はラスプーチンの肩に頭をもたれさせながら甘えて言った。
公爵夫人は接吻してもらうために顔を差し出しながら甘えた声で頼んだ。
「だっておわかりでしょう、神父様!」
「よしよし、いい子だ」とラスプーチンは彼女の胸をもみながら優しい声で答えた。
「欲しくなったんだな」
このような事はいつも私を驚かせた。
どうしてここではすべてが恥ずかしくないのだろうか。
あるいは、ここではすべてが特別なのだろうか。
ここでは甘やかされた貴族の女達が、薄汚れた初老の農夫の愛撫を待っていた。
怒りもせず嫉妬もせずに、おとなしく順番を待っているのだった。


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ラスプーチンの信者 商人の妻 ヴェーラ・ジャヌモア

ラスプーチンに初めて会ったのは、1905年04月のモスクワでした。
彼は赤ワインのグラスを手に私にもたれかかりながら、
何の前置きもなく「飲めよ」と言った。それから、「鉛筆を持ってきて書け」と命じた。
「天真爛漫さを学べ。苦悩は人をフランティックにさせるタチの悪いものだ。
太陽でさえ悩める者達を暖かく照らさない」 私は書きとめた。
「これを読め。心を込めて読め」とラスプーチンは言った。
そして私のニックネームをマダム・フランティックとした。
「あなたはついてるわ。彼は一目であなたに注目し愛してくれたのですもの」
と老婦人がささやいた。
「あんたは用事があってここへ来たんだろう。
さあ、向こうへ行こう。何がお望みかね、素敵な奥さん」
私達は隣の部屋へ行った。「あんたの抱えている問題は難しいね。
だが、皇后に話してみよう。たぶん、なんとかなるだろう。
皇帝の方がずっと俺を気に入っている。彼らは俺を愛さないわけにはいかない。
もし俺がいなければ、彼らも存続しえないし、ロシアも存続しなくなる。
あんたはペテルブルクへ来てもらわなければならない」

ラスプーチンを紹介してくれた友人から電話がかかってきた。
「彼はゆうべウチに泊まったんだけど、
今朝早くからそわそわしてあなたの所へ行く準備をしているわ。
尋ねると、『黒髪の美人に会いに行くんだ』と言うじゃありませんか。
これであなたは彼に何でも頼めるわよ。この機会をうまく利用してね」
私はペテルブルク行の急行列車に乗り込むラスプーチンを見送りに行った。
彼は私を抱擁して、「私と一緒にペテルブルクに来なさい。
あんたのためなら何でもしてあげるよ、フランティック。
いいかね、あんたが来なければ、何もできない」と言った。
そして見送りに来た一人一人に接吻して、車内に消えた。

10月にペテルブルクのラスプーチンの家に行き、
サロンのほとんど全員に会う事ができた。
白いスカーフの愛徳会修道女やみすぼらしい身なりの老女がいるかと思えば、
シルクや光沢のあるドレス・黒貂の毛皮・ダイヤモンド・
羽飾りをつけてセットした髪の女性もいた。
来訪者は全員、手にキスする儀式から始めた。
ラスプーチンは私を、
「この人はモスクワから来た俺の最愛の人、フランティックだ」と紹介した。
彼は私をアキリーナ・ニキチーシュナの隣に座らせた。
紅茶が注がれたので砂糖を入れようとすると、
アキリーナは私のカップを取り上げて「神父様、祝福をして下さい」と言って、
「神父様の手で砂糖をお入れになると、それが神の祝福になるのです」と私に説明した。
みんなもカップをラスプーチンに差し出した。
素晴らしいブルネットの男爵夫人、ヴェーラ・クーソワが皿を集め始めた。
ラスプーチンは短い説教を始めた。
「人はもっと天真爛漫でなければならない。天真爛漫であればあるほど神に近づける。
わしの可愛い御婦人がたよ、あんたがたはみなこざかしい。
わしはあんたがたをよく知っている。わしはあんたがたの心を読める」
帰る時になるとみな神父の手にくちづけをし、
彼の方は全員を抱いて唇にキスをするのだった。
「神父様、乾パンを下さい」と彼女達は求めた。彼が黒い乾パンを分け与えると、
皆はそれをよい香りのするハンカチにくるみ手提げの中にしまった。
女中が新聞紙にくるんだ2つの包みを持ってきた。
それはラスプーチンの汚れた下着だった。
「汚ければ汚いほどよいのです」と彼女達は言った。「汗が染みついた物ですから」

ロフチナが入ってきた。
彼女は昔風の仕立ての白い麻布の衣服をまとい、
頭には修道尼の白い頭巾をかぶっていた。
首からは十字架つきの小さな本がたくさんぶら下がっていた。12の福音書だ。
彼女はラスプーチンに向かって何かささやいていたが、
誰か大声で話す者がいるとにらみつけ「神父のもとでは、
大聖堂の中と同じように厳粛にしなければなりません」
「放っておけ。楽しませてやれ」ラスプーチンは言った。
近くの婦人に尋ねると、
「彼女は神父様を聖人のように敬って、隠遁者のような生活を送っています。
丸太を枕にして木のベッドで寝ているのです。聖女ですよ」と教えてくれた。

ベルが鳴ると、
簡素な服装のふっくらした金髪のアンナ・ゴロヴィナが立ち上がってドアを開けた。
偉そうに構えているアンナの母もそばにいた。
看護婦の制服を着た黒髪の素晴らしい美人、シェホフスカヤ公爵夫人がやってきた。
公爵夫人は夫と子供達を捨てて4年も彼につき従っている。
ラスプーチンは彼女を【私の雌アヒル】と呼び、侯爵夫人は彼の手や足にキスをしていた。
真珠貝のような爪をした繊細な指で公爵夫人がジャガイモの皮をむいてやっている間に、
ラスプーチンは魚を食べていた。公爵夫人は魚でねばねばしている彼の指にキスをした。
公爵夫人はラスプーチンの書斎へ行きたがった。彼は不機嫌にそれに応じた。
だが、二人は数分で戻ってきた。
ラスプーチンは怒っており、公爵夫人は目に涙を浮かべていた。
「俺はかつて彼女を愛した事もあったが、今はもう愛していない」
とラスプーチンは言った。「俺はあんたのためなら何でもするよ。
だが、あんたも俺を喜ばせ、俺の言う事を聞かなくてはだめだ。
あんたが俺の言う通りにすれば問題は解決する。嫌なら何もしてやらない」
清純無垢のマリアも私に謎めいた事を言った。
「彼はすべてを神聖にしてくれるのです。なぜなら彼が相手なら罪はないからです」
そして彼を困らせず折れるようにと私を説得した。

ラスプーチンは歌手のアレクサンドラ・ベリングを私のところに寄こした。
彼女は私がラスプーチンを苦しめていると非難した。
「どうしてあなたは神父のものになるのに同意しないのですか?
彼はすべてを神聖なものにするのです。だからあなたが彼とする事は何でも神聖なのです」
「あなたは同意なさっているの?」
「もちろんです。私は彼のものです。それは無上の幸福です」
「でもあなたは結婚してるんでしょう?あなたの御主人はどう思っているの?」
「主人は知っています。彼はこのことを大きな幸福だと思っています。
もし神父様が誰かを欲した時、私達はそれを素晴らしい祝福だと受けとめます。
私達も夫達もそう思います。今神父様があなたの事でどれほど悩んでいるか、
私達はみんな知っています。私は信者一同に代って、
神聖な神父様をこれ以上苦しめ、祝福を拒まないようにお願いするために参りました」

夕方、今度はラスプーチンが一人でやってきた。
「あなたは聖人と言われているのに、淫らな行為に誘おうとしておられる。
これは罪ではないんですか?」
ラスプーチンはささやきました。
「この事に罪などない。そんな事は人間が考え出したのだ。
獣達を見よ、奴らが罪を感じているか?単純が一番尊いのだ」
「神父様、あなたは約束ばかりして、何もして下さらない」
「あんたも俺に何もしてくれないじゃないか。
あんたがやっているのはこざかしく立ち回る事だけだ。
俺にひとときの愛をくれれば、あんたの問題はうまく進む。
愛がなければ、力が出ないし運も開けない。
俺はあんたを愛しているから心から助けたいと思っているが、愛なしでは何も生まれない」
ラスプーチンはいらいらしながら歩き回った。
彼は次第に落ち着きを取り戻し、
私を抱擁して「そんなに怒るなよ、フランティック」と言った。


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by xMUGIx | 2008-02-15 00:00 | ロシア
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