直球感想文 洋館

2017年 更新中
by xMUGIx
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愛新覚羅氏

◆愛新覚羅慧生
1938-1957 昭和13-昭和32 19歳没


●慧生 愛称エコ 
母・妹とともに母の実家である横浜市港北区日吉の元嵯峨侯爵家に住む  
●嫮生 慧生の妹 愛新覚羅嫮生、結婚して福永嫮生 
●大久保武道 青森の資産家の出身、文京区森川町の新星学寮に住む
●穂積五一 新星学寮の学監
新星学寮は学習院の寮ではなく様々な大学の学生が暮らしていた
●木下明子 親友、学習院のサークル「東洋文化研究会」の仲間
●佐藤静代 親友、小中高大と同級生で同じ学習院文学部国文科 愛称オサト


◆昭和31年(1956)04月 慧生・大久保 学習院大学文学部国文科入学

慧生が国文科に入学した時、同じクラスには男子が17名・女子が30名いた。
都会的で洗練された男子学生の中に独特の雰囲気を持つ大久保武道がいた。
強い青森訛りがあり、丸坊主に丸メガネ、雨でもないのに長靴を履き、
大学でただ一人学生帽をかぶっていた。(学習院には学生帽はなかった)
クラスメートの証言によると、大久保はよく死を口にした。

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福永嫮生

講義のノートを貸してほしいという名目で言い寄ってくる男子学生も2人いたそうです。
そのうちの1人について姉が帰宅してうれしそうにこんな話をしていました。
「食堂で一人で5人前ぐらいいろいろ取って並べて食べている人がいるのよ。
東北から来ているズーズー弁の人なの。
ノートを借りたいのはきっとまだ大学に慣れないのよ」


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木下明子

もう夏休みも近い頃だったと思います。
慧生さんが一人の男子学生を連れて教室に入ってこられました。
私はその人を見るなり意外な感じがしました。
というのは、その人は坊主頭でいまどき流行らない円形のメガネをかけ、
顔はニキビで皮膚の色が見えないという感じ。
しかも天気が良いのにゴムの長靴を履いてらっしゃるのです。
慧生さんはこの方大久保さんと言って私に紹介なさいました。
私は大久保さんにもどうぞと言って席をおすすめしましたが、
いや長靴が臭いから失礼しますと言ってずっと後ろのお席にお着きになりました。
あの人なによとエコちゃんにお尋ねすると、
エコちゃんは笑いながら、あの方少し変わっているのよ、
自分でこれと思った人のためなら火の中へでも飛び込みって型の人よ、
面白いところのある方よ、とおっしゃいました。


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佐藤静代

慧生とは小中高大の同級生で、慧生の死の一ヶ月後 学習院大学を退学した。
そのため当時から50年間、マスコミには一切語ることはなかった。

告別式で学生を代表して弔辞を読んだのはわたくしです。
命はいつまであるかわかりません。
これまで胸にしまっていたものを今日はすべてお話しさせていただきます。

エコちゃんは天真爛漫で華があって明朗快活、
ウィットに富んでいていつもクラスの中心にいるような方でした。
でも前にしゃしゃり出るようなタイプではなくて、
相手の気持ちを第一に考え行動しようとするところがありました。
それと対照的に大久保君は学習院のカラーにはまったく馴染まない存在で、
青森訛りを気にしておられたのか親しい友人もなくいつもポツンと一人でいらしたから、
エコちゃんはそれはとても気になさって、いつも声をかけて差し上げていました。

大久保君は入学当時からよく自殺を口にするところがあって、
クラスメートなら誰でも彼の自殺願望は知っていました。
エコちゃんは母親のようにそれを心配していつも心を砕いていらした。
お優しすぎるんです。
ですから事件が起きた時も、クラスメートはどうしてエコちゃんが?と思いました。
いつも冷静で賢明なエコちゃんが死を選ぶことは絶対にないと。


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穂積五一

寮における武道君の生活態度は非常に積極的で、
常にいかなる困難をも克服していくんだという青年らしい気魄に燃えていた。
死とか逃避とかいう否定的な言動はまったく見られなかった。
事件の後 学習院の友人達に彼は学校では時々死という言葉を口にしていたと聞き、
実は愕然としたのである


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大久保の弟

兄は母以外の女性との間に子供を作った父のことをよく思わず、
自分は父とは違うと思っていた。でも慧生さんを好きになればなるほど、
自分の中にも流れている父の血への恐れが増したのでしょう。


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◆昭和31年06月26日 この日大久保は初めて慧生を自宅まで送る。

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昭和31年06月26日 大久保の日記

ビデオホールにおけるリサイタルに{慧子}と二人で行った。
目白の東京パン食堂部で食事し、{慧子}の身の上話を聞かされた。
慧生との交際の本格的な第一日であったのだ。
この日こそは生涯の一重大事の発端をなしたのだ。
愛新覚羅慧生なる人の家も一応は知ったし、同情を禁じ得なかった。

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家族は「あの人いったいなに?ガスの集金人かと思った」と言って、
すべてが学習院らしからぬ彼を笑った。
この一言で慧生は大久保との交際は家族の理解を得られるものではないと判断し、
それ以来大久保の来訪を禁じ、大久保との交際を家族に秘するようになった。


◆昭和31年07月 大久保、夏休みに無銭徒歩旅行をする

慧生は上野まで大久保を見送りに行き、梅干しを贈った。
慧生は上野で大久保を探し回ったが見つけられず、
ふと足元を見るとリュックを枕にしている地下足袋姿の大久保を発見した。
「レディが盛装してお見送りするというのに、
もう少しなんとかした格好でいてくれればいいものを」と慧生は周囲に愚痴った。

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昭和31年07月14日 大久保から慧生への手紙

明日より一泊するごとに一本ハガキをお送りいたします。
一日でも欠けたら、死んでるかどうかした時でしょう。
生まれてこのかた、他人からこれほど親切にされた経験がありません。
良き姉さんであります。


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昭和31年07月17日 慧生から木下明子への手紙

※「青森氏」=大久保、「この方」=あなた

ミスター旦那が変にこじれてきてどうしたらよいかわかりません。
青森氏の下宿の玄関まで行かなければならないので、
一人ではいけないと思いましたのでミスター旦那に来てもらったわけです。
その間じゅう青森氏とミスター旦那がものすごく仲が悪くて、
もうちょっとでヒステリーが起きそうになりました。どうしたらいいとお思いになる?
ミスター旦那とつきあう意思がないのに
一緒に来てもらったりしたのは私が悪かったと思いますけど、
私としては男性という意識なしに
青森氏のお友達でもあるしと思って行ってもらったつもりです。
それから青森氏青森に向けて出発したらしいのだけど、
それ以来毎日手紙が来るのでママの手前困ってしまいます。
『明日より一泊するごとに一本手紙をお送りいたします。
一日でも欠けたら、死んでいるかどうかした時でしょう』
というので断る方法もないし、ノイローゼになりそうよ。
この方の御忠告通りママに黙っているなんていうことはぶち壊しです。
大学辞めろなんて言われたらどうしようかと思います。
私あと4年間大学に行けないかもしれないわ。
やっぱりママの言う売れ口の方に行く運命らしいわ。


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昭和31年07月30日 慧生から木下明子への手紙

帰って机の上を見ましたら青森氏から来ていました。もう3通来ております。
フナフナなんてすっかり忘れていましたら、今朝軽井沢から手紙が来ました。
でも御心配なく、フナフナなんか問題にしていません。
青森氏からの御手紙、もっぱら郷里の工業的発展とか
郷里に対して愛を持って活躍しなければならぬとかいうことばかり書いてあって、
ますます右派的に見えます。
私は育ちがブルジョア風だし、
青森氏は泥にまみれて田に働いているお百姓さんを一番尊敬し、
映画を観たり口紅をつけたりすることを快く思わないような人だし、
どうしてもついていけないような気がします。
私の親族と青森氏の親族とは生活も考え方も違い、
私自身でさえ青森氏とは育ち方も考え方も違うし、
青森氏の考え方、生活の仕方にはついていけません。
結婚生活というものは、
お互いに相手のために少しずつ譲り合うことにより円満に行われるものだと思いますが、
青森氏は自分がしようと思ったことはどんなことがあってもする性格なので、
相手に対して譲るなどということは決してせず、
自分のペースに人をも従わせようとする人のようです。
青森氏という人は、平凡に人のする通りに勤めて平穏な家庭生活を楽しみ、
課長や重役になって円満に社会に出て行こうとする人ではなく、
自分の思ったことを周りにはおかまいなくやり抜くことを生きがいにする人だと思います。
私のお嬢さん的な臆病な悪い点だと思いますけれど、
いざとなって母や親類の反対を押し切ってまで
そういう性格の人についていけるかどうかということになると、
どうしても不安でついていくことができません。
と言って同じ生活程度で趣味も同じ考え方も同じという同士でも
叔母のようなことになる例もあるし、
むしろ性格や親族などがまったくかけ離れた人でも、
私が本当に頼りにできる個性とか実力を持った
青森氏のような人の方が幸福かもしれないし、
私にはどちらが正しいのかわかりません。
青森氏と話をしていてよく話題がなくなったり黙ったりすることがあるの。
ミスター旦那とは不思議になんでもなく話ができて、
話しているのが楽しいという気持ちになります。
とにかくウラナリの時は尊敬しきって口をきいてくれるのも光栄の至りで
姿を見ただけでありがたがっていましたけど、
青森氏に対しては欠点が目につくし、尊敬という気持ちは全然ありません。
田舎っぺだと思うし、頭の方も私より少し幼稚だと思っています。
恋愛なんていうものではないことは確か。
ウラナリの時のノボセ方とはまるで違います。冷静です。
青森氏には決して決してネツなんか上げませんから御心配なく。いたって冷静に観察中。


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昭和31年08月04日 慧生から木下明子への手紙

おっしゃることよくわかりました。あと4年おつきあいしてみることにいたします。
彼は中央線のお茶の水で降りるのよ。この方と同じ線じゃないかしら。
もしそうだったら、今度機会があったら話してみてくださらない?
この方の第六感でピンと判断していただきたいと思います。

今日この方のお便りと一緒に青森氏のが来ておりました。
青森氏は例の通りですけれど、今日のはロマンティックでした。
浜辺で夕焼け雲を見て涙がこぼれたそうです。
夕焼けはきれいだとは誰でも思いますが、いちいち涙をこぼす必要はないと思うわ。
私ってこの通り冷淡なのですから申し訳ないようね。
私がやっぱり本当に心を捧げたのは残念ながらウラナリのようです。
初恋だったからかもしれないけど、あれが本当の愛情というものだろうと思います。
それに比べて青森氏と話しても大して感激なんかしないし、欠点ばかり目につくし、
頭の方は私の方が上じゃないかしらなんて思ったりして尊敬なんて全然ないんですもの。
青森氏はミスター旦那よりは良いけれど、
それでもすっかり寄りかかろうとするには子供すぎるし考え方も単純です。
私ってとてもフクザツなのよ。30ぐらいの人でないと話が合わないように思えます。
それにある程度経済的独立があって、
私にある程度自由にさせてくれる人の方が良いと思いますけど。
私がダンス・麻雀などをすると知ったら青森氏はきっとギョッとするでしょう。
そういう点もすべて受け入れて
一緒にダンスもしてくれるというくらいの融通性がなければ、私ついていけないわ。
私って精神的にものびのびと自由にさせていてくれないと息が詰まります。
でもとにかくあと4年あるのですから、クヨクヨしないで、
またもっと良い口があるかもしれないし、ノビノビ過ごそうと思います。


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昭和31年08月09日 慧生から木下明子への手紙

家にいるとママとおしゃべりばかりしているうちに一日が経ってしまいます。
結婚問題について考え方を教えているところですが、
理屈ではわかったような顔をしていても、
いざ直面するとものすごくガンコだろうと思いますので困ります。
でもウチのママはまだ若いし、手紙が来たり交際したりすることは理解してくれます。
いつも見せてなんて言いませんけど、こちらから見せるようにしています。
青森氏やミスター旦那のも、子供みたいだと笑って見ています。
でもそれがもし結婚相手と考えるなんていうことになったら、
モーレツに驚いてガンコになるのよきっと。
でも考えてみれば親の心配するのも無理ないと思います。
もしエコに子供があって青森氏のような人のところに行くと考えつつあるのを知ったら、
いくら子供を信用していてもやっぱりどんな人かわからないし心配すると思います。
親にすればなるべく良いところにやってあげたいというのは人情でしょう。
だからなるべくママの言うことも聞こうと思います。
同じ年じゃちょっと考える必要ありそうよ。単にお友達としてつきあってみます。

あれから、ミスター旦那から3通、青森氏から5通来ました。
ミスター旦那は手紙の書き方からして個性がなく、
初めにDear終わりにアデューとかバイバイなんて書いてあるのよ。
男の人のW過剰なんてゾーッとしてしまいます。
とにかくミスター旦那と長く一緒にいるとゾーッとしてきます。
私がここまで持ってきたというのは私が悪かったと思います。
やっぱり9月からは青森氏を第一に考えてることをはっきり態度にも見せ、
ミスター旦那にも納得させておく必要があると思います。
やっぱり一本筋でないと無理ね。
ことに青森氏のようなプライドが高くて孤独型の人は、女の人が冷たいそぶりでも見せると
それ以上突っ込んで恥をかくより苦しくても黙って我慢する型らしいので、
まずいことをするとまずいことになりやすいようです。
それはいいけど、青森氏という人がエコとのつきあいを恋愛だと思っていらっしゃるので、
それにエコをまるで自分のものみたいに自信たっぷりみたいなので、
それが気に入らないところです。
彼はまだ死ぬことばかり考えているらしいわ。
後に残った人間の落胆なんて考えないらしいし、
その点がわからないようだったら本当に行くべきではないと思っています。

打算なんかなしに本当に素晴らしい恋愛をしたいと思ってますけれど、
素晴らしい相手ができません。
青森氏とミスター旦那といっぺんに振って
せいせいしてしまえるような恋愛できないものかしら。
でもあの男の子2人を振ったら、どんなに恨まれるか恐ろしくなります。
4年間はどうしてもつきまとわれる運命らしいわ。
でも冷静ですから、御心配はいりません。


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◆昭和31年秋

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木下明子の証言

家族に大久保との関係を知られないように
木下明子に大量の封筒に住所氏名を書くことを依頼し、
大久保が木下明子名義で手紙が送れるようにカモフラージュをさせた。

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◆昭和31年11月 大久保の決闘騒ぎ

慧生には取り巻きの男子学生が多かった。そういう男子学生の一人にX氏がいた。
X氏は東京の名家の生まれで洗練されており趣味も合った。
慧生は大久保のことをほのめかして婉曲にX氏がそれ以上進んでこないように釘を刺した。
するとX氏は大久保に決闘を申し込んだ。
X氏は柔道の達人、大久保は合気道の達人であった。
意外な事の流れに驚いた慧生は木下明子のところに駆けつけて、二人で大久保を説得した。
穂積が説得した時には2日もかかったが、二人が説得するとすぐに納得した。

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昭和31年11月12日 大久保から慧生への手紙

御忠告感謝にたえません。
至らぬ自分になんらセンセーションを惹起させずに済ませてくれたことを感謝いたします。
【慧子】は美しい立派な人間だ。その美点を失わず、真の女の中の女になられますよう。
そして男の中の男になりたいと思います。
小生は絶対の自尊心を持ち、
必ずや将来【慧子】にも喜んでもらえる人間になろうと思います。
今後ともお気づきの点は御注意ください。

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◆11月30日
大久保は訪問を禁じられていた嵯峨家に、病に伏せっていた慧生の見舞いに来てしまう。
家族が「病気ですから」と面会を断っても、応接室から一日動こうとしなかった。
家族は彼の振る舞いに危険なものを感じた。

大久保は、慧生の手紙や写真をすべて焼却し、頭を丸坊主にした。

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昭和31年11月27日 大久保から慧生への絶縁状

26日日吉に参りましたが御不在でした。用件をお話しして帰寮いたしました。
かねて御忠告受けておりながらあえて日吉を訪れましたことにつきまして、
一言記させていただきます。
これも我が身の至らなさから出たことゆえ、小生それにつきましては十分責任を取ります。
友情にせよ何にせよ対女性間の交際は、
現在の我が身にとっては非常にマイナスとなるような気がいたします。
凡人のゆえかなさねばならぬことが出来なくなるのです。それ一途になってしまうのです。
以前より再三御忠告を受けていながら、はなはだ残念千万です。
小生、他人にへつらうことはできません。
小生、今よりいくらかでも立派な人間となって、
縁あらばいつの日にかまたお目にかかることもあろうかと心に期します。
たぶん昨晩は御家の方に何か言われたことと思いますが、
今後はもうそんな御心配はお掛けいたしません。
貴姉の御手紙は全部焼却したします。
小生の手紙はお返しくださいとは申しませんが、焼却せられたく希望いたします。
今日以降没交渉なることを、ただいま宣言いたします。


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同日 大久保から慧生への手紙

25日付御手紙拝見した時は、すでに御手紙も写真も焼却した後でした。
実を言えば、今日理髪店に行って毛を切ってしまいました。

武道は己の本分と天職に死ぬのみです。ただ夢のごとき半年。
今日落掌の御手紙はお返しいたします。君が上に幸あれ。


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◆昭和31年12月 大久保は慧生への思慕を断ち切るため座禅と断食の道場で荒行をする

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昭和31年12月12日 大久保から慧生への手紙

道場において4日間の修行を一心に積みました。死ぬほど厳しい修行でした。
本心を言えば、一度死んでみたかったのです。
ボーッとなり何もできませんでした。どうやら左足はコワレタようです。
そしてコワレタ足で立った時、自分の誠の欠如を悟りました。
一度慧生様に語りたいことがあります。
いかにお家が貴く現在の生活に事欠かぬからとて、
食物を無駄に食べれられることはもっとも恥ずべきことではないでしょうか。
慧生様はそれを意識することがあるのかどうか疑わしく思います。
このこと心がけられて悔いはないと思いますので、
あえて言い難きを言って進言いたします。

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◆同月 復縁

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昭和31年12月19日 大久保から慧生への手紙

今日は本当にうれしい日だった。【慧子】はやっぱりいい奴だと言いたい。
失礼、奴だなんて、許せ。
この年も良き結末をつけて閉じ得る。心から感謝します。
今夜この東京を去り、故郷に帰ります。
小生来年上京の時は、新たな心で一年前の気持ちに立ち帰って来ようと決心いたしました。

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◆昭和31年12月30日
高熱を出したという慧生からの手紙を受け取った大久保は、
帰省していた青森から再び上京する。
嵯峨家を訪問するが、犬に吠えられ、女中に拒絶され、
伝言のメモを残してまた青森へ戻った。

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by xMUGIx | 2007-01-13 00:00 | 中国
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